闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

BIS規制の検査マニュアルに関する質問主意書
(平成14年6月4日提出)

 BIS規制による金融庁の一斉検査が行われた。検査は大手都市銀行(以下、「都銀」という)と、地方銀行・信用金庫・信用組合(以下、「信金信組」という)ともに、一律の検査マニュアルが適用された。また、ペイオフ解禁の影響もあって、都銀とは明らかに役割が異なる信金信組の破たんが相次いだ。そして、これに関連して中小企業には信金信組の貸し渋りが及び、融資の行き詰まりによる企業倒産、経営者の自殺などが社会問題化している。
 都銀と一律の検査マニュアルの適用は信金信組にとって非常に厳しい基準であり、一律の基準は、信金信組の社会的役割とその必要性を否定するものにつながる。金融庁の行った一律の検査で、昨年度3月期決算で信金信組の半分までが最終赤字に追い込まれた。都銀と異なり、信金信組の取引先は中小企業が殆どであり、貸出先の制限もあり、赤字の企業が多い。このため一律の検査マニュアルの適用は信金信組にとって大幅な引当金の積み増しが必要とされる。これは非常に厳しいハードルであり、その結果、60近い信金信組が破たんに陥った原因になっている。引当金の積み増しは、中小企業に融資したくても事実上融資ができない状況をつくりだしてしまった。
 地方は、もともとモノづくりが中心であり地元の金融機関と共に発展を遂げてきた。地方経済の担い手として、我が国の中小企業が占める割合は95%以上に達する。近年、特にIT不況による地方工場の撤退や公共事業の削減で苦しむ建設業者、また老舗企業の行き詰まりも目立つ中で、信金信組の存在は資金調達や経営相談での大きな支えとなってきた。
 しかし、今回の一律の検査マニュアルによる信金信組の相次ぐ破たんは、地場を支え、日本経済を支える中小企業の経営を立ち行かなくし、倒産しなくてもいい企業まで倒産させてしまった。これは明らかに政府の経済政策とは相反するものである。
 さらに深刻な状況として、4月から解禁のペイオフによる都銀への預金シフトの動きが挙げられる。預金者の金融機関選別の動きが加速していることは当然の成り行きとしても、異常ともいえる預金シフトはペイオフを実施した先進国には過去見られない現象だという。経営基盤の弱い信金信組にとっては先行き予測できない状態が続く。中小企業にとって取引先金融機関の先行き不安は、我が事として深刻に受けとめざるを得ない。
 政府は中小企業向け融資に対する配慮から、信金信組への「検査マニュアルの弾力運用」「意見申し出制度」などを考慮したとされるが、これは十分に機能しているのか。
 従って、以下質問する。

 

1.BIS規制の検査マニュアル見直しについて

BIS規制は国際的統一基準であり、都銀に対しては欧米の規制を適用されてしかるべきである。しかし都銀と役割が明らかに異なる信金信組に対して同じ検査マニュアルを適用するのは如何なものか。二重構造の検査基準を認めるべきではないか。

2.ペイオフ見直しについて

1.ペイオフにより預金が都銀に集中している。このために信金信組の預金流出が止まらずに厳しい状況になっている。また、ゼロ金利や現下の厳しい経済状況からペイオフの本格的導入への見直しを考えるべきではないか。

2.米国ではペイオフによる預金保護の上限額を引き上げようとする動きがあるという。我が国も例えば1千万円を2千万円にするなど、都銀への過剰な預金シフトを防ぐために上限額の引き上げを考慮すべきではないか。

3.都銀と信金信組におけるペイオフの上限額に差をつけることで、信金信組の預金の流出を防ぐ手立てを中小企業対策の一環として考慮すべきではないか。

 

 以上、質問する。